« イギリス国民投票をめぐって〜「暗黒を呪うよりはロウソクを灯すほうがいい」(「もう一つのヨーロッパは可能だ」キャンペーン声明) | メイン | ATTACヨーロッパ・ネットワーク声明〜「EUがより良いヨーロッパの一部になれないのなら、一掃されるだろう!」 »

2016年6月26日 (日)

「パレスチナ占領とイスラエル戦争経済」〜シール・ヘヴェルさん講演

6月26日、エルおおさかで、シール・ヘヴェルさん講演会「パレスチナ占領とイスラエル戦争経済」が開かれました。主催は、パレスチナの平和を考える会です。ATTAC関西も共催者の一つになっています。

 

P1030244

シール・ヘヴェルさんは、オルタナティヴ情報センター研究員。イスラエルの占領経済の実態を研究し、その問題を積極的にメディア等で発信しています。今回は、日本平和学会の招きで来日し、学会の合間を縫っての講演とのことでした。 

講演内容をまとめました。下の続きを読むから読むことができます。文責はATTAC関西にあります。見出しは、ヘヴェルさんのレジュメからです。

P1030241

軍事産業の大きな流れ

 

イスラエルの軍事産業は建国以前から始まっています。当初はイデオロギー的側面が強く、独立以前にパレスチナにいた民兵を武装させるのが目的でした。この民兵が後のイスラエル軍になっていきます。

軍事産業には公有部門と民間部門があり、公営部門が次第に民間に移行されてきました。また、イデオロギー的側面から経済的目的(利益追求)へと移っています。最初は、余剰兵器の販売によって売却代金を新たな投資に回していましたが、いまはそれが逆転し、技術開発・高度化によって売上げを増やそうとしています。

軍事産業の中には二つの考え方がありました。それは、特殊化と自給という考え方です。自給派は、よりイデオロギー的な立場をもとに、イスラエルの軍隊が必要とするあらゆるものを供給できなければならない、他国からの輸入を不要にしなければならないという立場です。一方。特殊化派は、経済的利益追求に近い立場で、特定の分野に開発を集中して、それ以外の武器は輸入で間に合わせるという立場です。

1967年第二次中東戦争までこの論争が続いていましたが、戦争による占領地拡大の結果、フランスが制裁措置として武器輸出を禁止しました。このとき、占領地から撤退してフランスからの武器輸出を再開するという選択肢もありましたが、そうせずに占領地維持の方針をとったため、自給派が勝利しました、

しかし、これは完全に失敗しました。すべての武器を自給するためには、イスラエルの技術的能力が不足していたためです。このとき、占領政策によって武器禁輸だけでなく、イスラエルが世界有数の武器市場になることをイスラエル政府は認識していませんでしたが、数年後にはアメリカが最大の武器援助国となったのです。年平均で30億ドルに相当するアメリカからの武器援助がイスラエルの軍事産業を根本的に変えてしまいました。

 

アメリカのイスラエル援助

 

アメリカからのイスラエル軍に対する援助は、イスラエルに対する援助ではありません。お金ではなく、武器と引き換えることができるバウチャーを提供するやり方で、このバウチャーでアメリカ製の武器を買うため、実質的にはアメリカ軍事産業への補助金と同じでした。

さらに、アメリカはイスラエルの軍事産業に一定の条件を付けています。つまり、アメリカ軍事産業との競合を望んでいないのです。ときには、イスラエル軍事産業のプロジェクトを中止させることもあります。たとえば、イスラエルが数十億ドルの投資をした後で、F15に競合する戦闘機の開発プロジェクトをやめさせたこともあります。今日では、特殊化の傾向が優位に立っていて、特定の技術についてのみ開発を進めています。

アメリカがイスラエルに援助しているのは決して偶然ではありません。占領地において市民を支配するため、そして近隣諸国に軍事攻撃をかけるために、イスラエルは常にアメリカが供給する武器を必要としています。実際に使われているということがアメリカ軍事産業の宣伝ポイントになるのです。キッシンジャーによれば、「1台の戦車をイスラエルに援助すれば、周辺国に4台の戦車が売れる」のです。

アメリカの大統領選挙のたびに、イスラエル・ロビーが圧力をかけていると話題になりますが、それほど大きい存在ではありません。軍事ロビーのほうが遥かに力を持っています。しかし、大統領候補は軍事産業のロビーに行く代わりに、イスラエル・ロビーに行って「いつでもイスラエルを守る」と言います。それは軍事産業ロビーに武器購入を約束しているのと同じ意味を持つのです。実はイスラエルロビーの役割がここにあるということです。

表を見ると、アメリカの援助額はそれほど増えていませんが、民生援助が減り、軍事援助が増えていることがわかります。今日では民生援助はほとんどありません。また、ドルベースで援助額は増えていませんが、価格上昇の結果、実質的には援助は減っています。

 

武器輸出

 

イスラエル国内の軍事産業の構造を変えることに、アメリカの軍事援助は大いに貢献しています。当初は、イスラエル軍への武器供給に責任を負っていたのですが、今日ではイスラエル軍向けは20%に過ぎず、残りは輸出です。しかも、イスラエルを攻撃する可能性のある国にも輸出しています。

武器の輸出については防衛省が独立した権限を持っていて、独自の税関さえを持っています。したがって、輸出に関する情報は防衛省が開示を認めたものしかわかりません。第三者の情報源から得た情報では、外交関係を持っていない国への武器輸出も認めているとのことです。インドネシアとの武器取引は許容されています。

軍事産業の国際比較では、イスラエルは輸出額では7位です。アメリカが1位で、他の全ての国を合計したものよりも多くを輸出しています。しかし、人口1人当たりの武器輸出額を考えてみると、イスラエルが889ドルで1位になります。

 

イスラエルの軍事セクター

 

ごく少数の人々が軍事産業の利益を独占していて、イスラエルの人々の大多数は武器輸出で何らの利益も得ていません。しかし、イスラエルの経済にとっては武器輸出は非常に大きな意味を持っています。15万世帯が武器貿易から収入を得ていますし、全輸出の11%が武器輸出です。それ以外に、ホームランドセキュリティが大きな収入をもたらしています。

イスラエル産業のほとんどは民生用ですが、世界で産業がもっとも軍事化されている国です。全土が軍事基地になっているのも他国に例がありません。

 

イスラエルの特殊性

 

それでは、イスラエル軍事産業の特殊性はどこにあるのでしょうか?輸出に際しては「この武器はどこかで使われたことがあるか」と必ず顧客から聞かれるとのこと。イスラエルの強みは、武器が実際に使用されていることです。ガザへの攻撃の後には、必ず武器見本市が開かれます。そこでは、武器がガザでどのように使われてかという展示がなされるのです。

イスラエルの技術そのものが画期的という訳ではありません。ガザを爆撃する戦闘機はアメリカ製、海から攻撃する軍艦はドイツ製で、イスラエルが技術を持っているのは市民向けの武器です。

イスラエル軍の将官は40代、50代で退官しますが、その後の仕事は兵器の生産にかかわる産業になります。兵器やホームランドセキュリティにかかわる技術開発の最初の顧客はイスラエル軍で、コネを頼って軍に売り込み、さらに国際武器見本市にイスラエル軍が使っているとして展示するのです。そうすると、イスラエルと同じような悩みを持っている国、つまり市民をコントロールしたいと考えている国、格差が極まっているような国から注目を浴びることができるのです。

たとえば、ブラジル・リオの近郊に警察が「ガザ回廊」と呼ぶ場所があり、治安対策でオリンピックに向け地域全体を閉じこめることを考えていました。ガザと同じように、チェックポイントの設置やドローンによる監視などによってです。

 

ホームランド・セキュリティ

 

ホームランドセキュリティ産業の目的は、戦争に勝つことではありません。軍幹部のガル・ヒルシュは2006年のレバノン侵攻の指揮官で、敗北の責任を問われて退官したあと、兵器会社を興しました。彼はジョージア(グルジア)に武器を売り込みました。当時のジョージア政府は、イスラエルの武器は優秀だからロシアに勝てると思ったようですが、2008年にはロシアにあっけなく負けてしまいました。つまり、イスラエルの兵器が戦闘において優れているということではないのです。その結果、彼の会社は倒産しました。

私がこの話をしたのは、日本の政府がイスラエルの武器を購入しようと考えているからです。イスラエルが得意とする分野は、国の防衛ではなく、市民を敵にする作戦なのです。ブラジルやインドが輸出先として大きいのはこのためです。

イスラエル兵器をどこの国が買っているのかについてですが、新聞にはアジア、アフリカの国と武器輸出契約が結ばれたという記事がよく掲載されています。表に載っている国のうち、フランスは67年以前のものが大半です。ブラジルは9位ですが、最近に限定すれば2位か3位ですグァテマラ、チリ、南アフリカは一時期に集中しています。インドが今日では最大の輸出国になっています。アメリカが通算では1位ですが、イスラエルはアメリカの兵器を補完する技術・武器を提供しているのです。たとえば、F16戦闘機専用のパイロット用特殊なヘルメットなど。日本がこのリストに載らないことを希望しています。

 

安全保障の代償

 

イスラエル経済が非常に軍事化されていることは、アメリカでも軍事産業GDPの4.5%なのに、イスラエルは公式の数字では6%、専門家の分析では12%に達することからもわかります。

この膨大な軍事支出は人々の生活に大きな影響を与えています。生活レベルは同程度のGDPの国と比べると低いし、深いレベルの軍事化は大きな格差の基礎になっています。

高度な安全保障がイスラエル軍への負担にもなっています。軍への志願者が減っているのです。イスラエル市民のガザ攻撃を支持していますが、攻撃に自分が参加するのはノーと言っています。徴兵制はあるが、48%しか軍隊に入っていません。52%は軍隊に入らなくていい方法をいろいろ考えます。私も軍隊には入っていません。イスラエルはある意味では非軍事化してきているとも言えます。

軍事支出の大きさは占領地住民の抵抗が反映されたものです。持続している抵抗がイスラエル軍隊を打ち負かすという可能性はありませんが、大きなプレッシャーをかけ続けているという点では成功していると言えます。壁の構築や入植地の防衛がイスラエルにとって大きな負担となっているのです。占領から50年経ちますが、パレスチナの人々はあきらめていません。

では、監視システムなどの先端技術によって抵抗を押さえ込むことができたのでしょうか?イスラエルがより安全となったのでしょうか?イスラエルが世界からの非難をかわすのに役立ったのでしょうか?答えはノーです。

 

危機

 

イスラエルは新自由主義的な社会になっていて、以前と違って退役軍人の全てが軍事産業に就職できる訳ではなくなっています。民間会社の経営陣に加わることは過去に比べて難しくなっていますし、政治家になることも難しくなったのです。これもイスラエルの軍事産業が非常な危機にあると考えている理由です。

徐々に変化が起きています。軍事輸出も減ってきています。2014年ガザ攻撃後に開かれた武器見本市では大きな取引が成立しませんでした。私の考えでは、顧客が2014年の軍事作戦に満足しなかったのだと思います。51日続いた作戦では2000人以上の人々を殺しましたが、抵抗は収まっていないからです。技術は政治を代替するものではないという教訓です。

もう一つは、BDS運動の影響があります。運動の目標はイスラエルに国際法を守らせることです。これは多くの人々を納得させました。イスラエルでは全ての人がBDSを知っています。イスラエルの人々は、再度のガザ攻撃がどういう影響を自分たちにもたらすか考え始めているのです。BDS運動がイスラエル国内へ影響を及ぼし始めています。政府高官や軍幹部はパニックに陥っています。彼らは「BDS運動は欧州や北米で行われているので、もっと東に行こう。アジアに目を向けよう」といい出しています。新しい顧客として日本に注目しています。

 

行動のために

 

パレスチナ問題はグローバルな問題です。パレスチナやイスラエルの将来だけに関わる問題ではありません。日本の問題でもあります。パレスチナ連帯運動の世界的拡がりの一方で、右翼勢力もイスラエルを支持して世界的につながっています。世界の政治家がイスラエル支持と言うとき、自分の国をイスラエルと同じような国、特定の民族グループに属しているというだけで逮捕されたり、投獄されたりする国にしたいと考えているのです。連帯運動の側から言えば、私たち自身が自由でありたいからパレスチナに連帯するのです。

最後に、シャハクのことばを引用して終わりたいと思います。「ローデシアからアパルトヘイト下の南アフリカ、湾岸君主国にいたるまで、イスラエルは、自由のために戦う民衆ではなく、彼等を投獄する者たちと利益を共にしてきた」

ありがとうございました。

コメント

コメントを投稿

最近の写真

  • Zap20170401
  • Intag170219
  • Rceplogo
  • 1446699735604
  • Https2f2fblueprintapiproductions3am
  • 15350636_1504259862921521_202831455
  • 2017_0120nodapl1
  • 2017_0120nodapl4
  • Img_0058
  • Ae_banner
  • 212gj
  • 221